勤務地紹介

県立大島病院

 奄美群島の中心に位置する鹿児島県立大島病院は、平成266月に救命救急センターが開設され、平成2812月にはドクターヘリが導入されました。鹿児島県立大島病院の救命救急センターを基地として奄美群島全体および十島村等を運航範囲としています。群島内の医療機関で対応困難な症例に関しては、鹿児島本土や沖縄の医療機関と連携し、搬送を行っております。

 平成28年度の総合内科は森田先生を診療科部長とし、満先生、堂嶽先生、永山先生、私、研修医(12)での診療となりました。診療業務の流れとしては、朝の病棟カンファレンス(毎朝730分から30分程度)、救命救急カンファレンス(毎朝8時から30分程度)、外来診療、病棟診療でした。朝の病棟カンファレンスは総合内科全員で行い、前日および夜間などに新規で入院となった患者や急性期の患者を主な対象として診療方針の確認を行っております。外来診療に関しては、当日と再診に分かれ、それぞれ1名ずつで行う体制としています。私の場合、当日を週1(患者数1520/)、再診を週1(患者数2030/)で行っておりました。病棟診療に関しては、森田先生・永山先生・研修医のチーム、満先生チーム、堂嶽先生・私・研修医のチームによる3チーム体制で開始し、全体で常時40名前後の入院患者を診療しておりました。その後、ドクターヘリの運航に際して、チーム制から森田先生、満先生、堂嶽先生、私の4人の主治医制とし、永山先生は救命救急センターで診療する体制へ変更となりました。また、毎週金曜日16時からは各病棟の看護師長含めた病棟カンファレンスを行い、診療方針の再検討や週末の急変時対応等について確認することにしています。

 今年度の総合内科の特徴としては、以前自治医科大学で勤務されていた森田先生が部長となり、研修医教育を始め、学会発表にも積極的に取り組み、より一層アカデミックな診療となりました。また、堂嶽先生がいらっしゃったこともあり、気管支鏡検査を含めた肺癌や間質性肺炎の治療も積極的に取り組むことができました。加えて、脳血管外科、救急科と連携し、脳卒中チームを設立し、総合内科としては脳梗塞患者の治療に参加することとなりました。

 現在、県立大島病院にはcommon diseaseから稀な疾患まで多様な症例が群島全体から集まってくるため、若い医師にとっては絶好の研鑽の場と思われます。

37期 末永勝士(H28年度年報より)

 

 

県立北薩病院

 当院は伊佐市に位置し、県内北部の地域医療の中核を担っています。急性期医療だけでなく、循環器科・呼吸器科・神経内科・外科などの専門医療、また包括ケア病床を設け地域医療期間や福祉施設との連携・支援にも力を入れて取り組んでいます。

 病床数は110床で、診療科として循環器科3名、呼吸器科2名、神経内科1名、内科2名、外科2名、小児科3名、計13名の常勤医師の他に、脳神経外科、呼吸器外科、アレルギーリウマチ科、糖尿病科、肝臓外来の専門外来があります。

 自治医科大学卒業医師は、副院長兼呼吸器内科部長の田中修也先生、内科医長の花輪宏明先生、そして外科の平瀬が勤務しております。また霧島市立医師会医療センターより重田浩一朗先生ならびに肘黒薫先生が週に一度内視鏡検査にいらっしゃったり、鹿児島大学病院からの検査応援医師として樋之口真先生がいらっしゃるため、下部内視鏡検査のご指導や症例相談などをスムーズに行うことができる環境となっております。また、今年度は内科に初めて鹿児島大学地域枠卒業医師を1名迎え、2名体制で診療を行ないました。

 当院の1日外来患者数は病院全体で約170名となっており、呼吸器内科と内科でそのうち約3分の1を占めております。また、入院においても病院全体における1日平均入院患者数は約90名となっており、その半数が呼吸器内科と内科の患者さんとなっております。疾患別にみますと、悪性腫瘍・びまん性肺疾患・血液疾患など専門性を必要とする疾患から、COPD・誤嚥性肺炎・生活習慣病・廃用症候群などの高齢者によくみる疾患に到るまで多岐に渡っています。外科におきましては1年間で約30例の手術を行い、内容としては鼠径ヘルニアや腹腔鏡下胆嚢摘出術の数が多数ですが、悪性腫瘍手術も少数実施しました。

 少子高齢化が顕著に見られる北薩地域において、患者さんのニーズに答え全人的医療を行うためには診療科を超えた対応が必要です。そのような環境における自治医大卒業医師の果たす役割は非常に大きいものと感じております。

                                   33期 平瀬雄規(H28年度年報より) 

県立薩南病院

県立薩南病院は地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、第二種感染症指定病院、災害拠点病院、結核予防指定病院、僻地医療拠点病院等、地域の中核病院として多くの役割を担っており、急性期疾患に対応できる医療資源が乏しい地域において必要とされる高度・専門医療、地域包括ケアを提供することを目標としています。

病床数は一般病棟151床、感染症4床、結核20床の合計175床です。常勤医は総合診療科2名、循環器内科2名、消化器内科2名、腎臓内科1名、外科4名、放射線科1名の計11名で、非常勤として循環器内科、腎臓内科、糖尿病内科、肝臓内科、血液内科、消化器内科(内視鏡)、放射線科、小児科が派遣されています。

自治医大卒業生は総合診療科に属し、循環器内科、消化器内科、腎臓内科以外の内科を担当し、田中医師は呼吸器領域を中心に、石橋医師は糖尿病領域を中心に内科一般診療しています。また緩和ケア部門も担当しています。その他、地域医療支援機構の代診医派遣業務を行っており、南さつま市笠沙の野間池診療所、薩摩川内市甑島診療所等に代診医派遣を行っております。

呼吸器関連の検査では、気管支鏡検査14件、睡眠時無呼吸症候群に対するPSG検査6件を行いました。入院患者疾患分類は以下の通りです。

県立薩南病院の理念は、「中核的病院として地域医療に貢献し、住民に信頼され、安心して医療を受けられる病院を目指す。」と定めています。総合診療科は、外来・入院患者数ともに増加し、医師が休む間もないほど多くの患者さんに来院して頂いており、我々への信頼と期待の表れと受け止め、今後も地域医療に貢献できるよう更なる精進に努めようと思います。

 

 呼吸器感染症(肺炎等)            98件(内、肺結核10件)

 原発性肺癌                 90件

 びまん性肺疾患(間質性肺炎等)        24件

 閉塞性肺疾患(COPD,気管支喘息等)      23件

 糖尿病                   16件

 尿路感染症(腎盂腎炎、膀胱炎等)       15件

 癌末期の緩和ケア(肺癌除く、その他の癌)   14件

 他に熱中症、脱水症、感染性腸炎、アナフィラキシー、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、DIC、過換気症候群、ダニ媒介感染症、帯状疱疹、痛風等の入院診療を行いました。

 

                                  28期 石橋和久(H28年度年報より)

霧島市立医師会医療センター

鹿児島赤十字病院

 鹿児島赤十字病院総合診療科部は、部長の永井先生、自治医大義務内医師3名、そしてH28年度より鹿児島大学地域枠卒業生1名の計5名で業務を行なっている。病院内での業務のみでなく、三島村、十島村への常駐医派遣や十島村下3島への巡回診療を担っている。ここでは、①鹿児島赤十字病院総合診療科部、②三島村・十島村、として、勤務状況について報告する。

 

1. 鹿児島赤十字病院総合診療科部

 上記5名のうち、永井先生、他2名(3ヶ月毎に三島村・十島村常駐医と交代)の計3名で業務を行なっている。主な内容としては、外来、病棟、上部消化管内視鏡検査、十島村下3島への巡回診療を行なっている。 外来、病棟では、常勤の循環器内科、リウマチ科でカバーしていない内科的疾患を担当している。ただ、高齢者も多く、単科でカバーできる状況も少ないため、上記2科の疾患においても総合的に加療が必要と判断されれば当科で診ることあり、その他外科系疾患で入院されている方も、周術期の血糖コントロールや感染等で紹介を受けることも多い。近接している特別養護老人ホームからの患者紹介もあり、急性期のみならず、終末期医療についても考える機会も多い。また、検診での上部消化管内視鏡検査は、消化器専門医に進まないものでも必須の手技として求められ、着任前にある程度の研修を積んでおくことが望ましいと思われる。当科では週に1回の研修日が認められており、他院のご協力の元、内視鏡や外科研修日として修練に励み、日々の業務へ還元している。

 十島村下3島(悪石島、小宝島、宝島)への巡回診療については、当科医師のみならず、H27年度より、県立大島病院からも1名派遣が行われている。初年度は鹿児島大学地域枠医師が担当されていたが、その後は自治医大義務内医師の34期永山先生が担当している。

 

2. 三島村・十島村

 三島村(竹島、硫黄島、黒島の3島)、十島村(口之島、中之島、諏訪之瀬島、平島の上4島)にそれぞれ常駐医を1名ずつ派遣している(3ヶ月毎に総合診療科部勤務と交代)。定期船を利用し、各島で月に約2回ずつ診療を行っている。島には常駐の看護師がおり、医師が島内にいない際は電話での対応をしている。近年、島での看取りを希望されるケースも増えはじめ、看護師、役場、他院の緩和ケア科等と協力し、患者本人や家族の希望にできるだけそえるような離島での終末期医療の在り方について検討を重ねている

 救急患者については、必要に応じて定期船での病院受診(鹿児島本土、奄美大島など)、また、ヘリ搬送で対応している。ヘリ搬送は、日中はドクターヘリ(または県の防災ヘリ)、夜間や日中の天候不良時は自衛隊ヘリでの対応になっている。鹿児島市立病院、米盛病院のドクターヘリに加え、H28年12月より県立大島病院のドクターヘリ運航が開始され、ファーストコール先として十島村全域をカバーして頂いている。ヘリ要請については常駐医師の裁量によるため、検討会等を定期的に実施し、妥当性について評価を行い、適正利用に努めている。

                                  36期 有木園哲仁(H28年度年報より)

 

南さつま市野間池診療所・笠沙診療所

   南さつま市笠沙町は南さつま市の最西端にある自然豊かな町です。なかでも野間池地区は釣りのメッカとしてはいうまでもなく、景観や海の幸、焼酎などを楽しめる観光地としても定評のある地域です。

 野間池診療所および笠沙診療所の診療地域である旧笠沙校区は、人口489人、65歳以上の高齢化率58.5%(平成28年4月現在)と、過疎化に加え高齢化が深刻な地区です。

 両診療所ともに無床診療所で、職員は医師1名、常勤看護師1名、事務長1名(南さつま市野間池出張所長が併任)、事務員1名のスタッフで診療を行っています。診療所長は南さつま市市民福祉部保険課長が併任しています。医療器具としては超音波診断装置、単純X線装置、上部消化管内視鏡、超音波骨密度測定器、心電図、AED、気管内挿管セット等があります。

 野間池診療所は平成28年4月より笠沙地区総合センター「よいどこい」として、旧野間池診療所より600mほど離れた旧笠沙小学校跡地に移転しました。エコーは数十年来使われてきたと思われる年代物のエコーが使用されていましたが、平成28年度より新しいエコーが導入されました。診療は紙カルテですが、単純X線、エコー、内視鏡画像は画像管理システムの導入によりパソコン内で一括して管理、画像参照ができるようになりました。

 笠沙診療所は野間池診療所から車で10分程度の山中にあります。火曜日午後、金曜日午前のみの診療です。集落の人口減少とともに患者数も減少傾向にありますが、車を運転できないような高齢者や、車道から更に小道をくねくねと登っていくような場所に住んでいる方もいるので存在意義はあると思います。

 外来で診療する疾患は高血圧症、脂質異常症、糖尿病、変形性関節症などの慢性疾患が中心で、小児や外傷患者は比較的少数です。入院が必要な場合は県立薩南病院をはじめとする旧加世田市内の病院に入院をお願いしています。

 地域の高齢化、過疎化とともに外来患者数も年々減少してきています。しかし、訪問診療が必要な患者さんもおり、高齢化と共に今後も増加していくことが予想されます。陸続きで車で40分ほど走れば病院もありますが、高齢化が進む地域の中で通院手段がない方も多く、地域を支える診療所として果たすべき役割は大きいと思います。今後も地域住民の方が安心して生活が送れるように努めていきたいと思います。

                                   36期 濱田嵩史(H28年度年報より)

南大隅町立郡へき地出張診療所・大泊へき地出張診療所

 

  南大隅町は大隅半島南部にあり本土最南端に位置する町です。鹿児島市からフェリー含めて二時間半、鹿屋市からも車で70分と決して地理的に便利な場所ではありませんが、錦江湾を挟んで美しい開聞岳も見え、反対側には天気が良ければ屋久島も見える日もあり大変風光明媚な場所です。

 人口は平成29年2月1日現在で7730人、市町村別高齢化率は南大隅町45.6%で(平成27/10時点)県下第1位となっています。高齢化・少子化が県内で最も進んでいる佐多町では子供を連れているだけで町民の方が声をかけて下さり、また保育所も診療所から車で10分の所にあり、園児20名弱に対して保育士(パートタイムも含む)7名という手厚い保育が受けられます。女性医師にとっては安心して子供を預ける場所があると言うだけでとても働きやすい場所だと言えると思います。

 佐多地区の医療機関は町立の診療所が4施設(辺塚診療所、佐多診療所、郡診療所、大泊診療所)あり、いずれも無床診療所です。辺塚診療所は週1回肝属郡医師会病院からの医師派遣があり、佐多診療所は17期の福田弘志先生が常勤として勤務されており、自治医大義務年限内医師は郡診療所と大泊診療所を担当しています。郡・大泊診療所は以下のような状況で運営しています。

 

 職員:医師1名 看護師3名 事務1名(全て女性)

 週間予定:月曜・木曜  郡診療所で終日外来診療

      火曜・金曜  午前中は大泊診療所で外来診療 午後は訪問診療

      水曜     奇数週は医師研修日

             偶数週は郡診療所で上部消化管内視鏡等の検査日

 設備: 郡診療所    心電図、超音波、上部消化管内視鏡、レントゲン、除細動器

     大泊診療所   超音波

 

 検体検査は末血・尿検査、PT-INR, CRPの簡易検査測定のみで、それ以外は肝属郡医師会立病院に委託しています。また郡診療所はH28年/1月から、大泊診療所はH28年/8月から 電子カルテ導入し、現在は近隣の佐多診療所も含めて医療機関どうしでお互いのカルテを 閲覧できるようシステムを構築中です。

 H28年度の1日平均受診患者数は郡診療所が26.7人/day、大泊診療所が13.0人/dayと昨年に比べてほぼ変わらない~やや増加傾向です。鹿屋市の整形外科に関節注射のみなどで受診していた患者さん方が交通事情等を理由に当院にかかるようになるなど、高齢化・自家 用車が無いなどの理由で、苦労して遠方の専門医にかかる前に、まずは近くの診療所でどうにかならないか、とおいでになる方が増えたように思います。診療内容は高血圧、脂質異常、糖尿病などの慢性疾患に加えて、高齢・独居の多さからか不安神経症、うつ病、パニック、血の道症などの心の問題を抱えての患者さんも多い印象です。また訪問診療の人数は昨年に引き続きさらに減少傾向であり、今年度は約15名の患者さんを訪問診療で見ていました(昨年より約5人減)。介護する側の高齢化も深刻であることに加え、近年は転倒・骨折などを機に急にADLが落ち、整形入院からそのまま施設入所となる方も散見されました。どの過疎地域でも共通していることですが、高齢・認知症・独居が佐多地域でも大きな問題となっており、対応には苦慮する事も多くまだまだ模索中ですが少しでも地域の方が楽しい毎日を送ることができるよう日々努力していきたいと思っております。

                                   31期 花輪麻衣(H28年度年報より)

薩摩川内市鹿島診療所

 鹿島診療所は甑島列島(串木野市の西沖合約45kmにあり、上甑島・中甑島・下甑島の有人三島からなる。上甑島と中甑島は橋でつながれていて車での往来ができるが、中甑島と下甑島は現在架橋工事中で車での移動はできず船で往来している)の中の下甑島の北部に位置している。下甑島には北から鹿島診療所、長浜診療所、手打診療所の3つの診療所があり、この内、鹿島診療所へは義務年限内の自治医大卒業医師が定期的に派遣されている。下甑島では手打診療所のみが入院可能な有床診療所であり、鹿島地域で入院が必要な患者が出た場合は、手打診療所へ入院を依頼するか、或いは対岸の鹿児島本土の専門病院へ搬送するかの判断を行っている。下甑島から鹿児島への移動手段は、串木野新港からはフェリーが、川内港からは高速船が、それぞれ2往復ずつしており、それぞれ片道約2時間半、1時間半である。

 鹿島地域の人口は平成28年4月1日現在で439人、65歳以上が50%以上を占め、高齢化割合が著しい。鹿島地域には保育所はなく(青瀬地区に保育所は1つ存在)、鹿島小学校(幼稚園併設)は全校生徒(小1~6)18名(そのうち外部からのウミネコ留学生は7名)である。鹿島中学校は平成23年から休校しており、中学生は隣町の中学校までバスで通学している。

 鹿島診療所は平成18年度以降休床しており実質的に無床診療所である。職員は常勤医1名、隔週派遣の歯科医師1名、看護師3名、事務職2名が勤務している。 設備はアナログX線装置、超音波機器、胃カメラ、心電計、牽引器、マイクロ波照射器などがある。放射線技師はおらずX線は医師自ら撮影・現像している。胃カメラの件数は、以前胃カメラが故障して実施できなかった期間がしばらくあったこともあり、月1~2件程度の少数に留まっている。1日の平均外来患者数は15~30名であり、当診療所の主な役割としては、高齢者の慢性疾患の管理、及び救急患者への対応が挙げられる。救急患者の搬送手段は、島内の手打診療所への搬送の場合は救急車、島外の病院への搬送の場合は、定期船(フェリー・高速船)・民間漁船(定期船で間に合わない場合)・Drヘリコプターである。私が平成27年4月に赴任してからは鹿島地区からのDrヘリコプターでの救急搬送は幸いにも0件である(下甑島全体では年間5~6件程度である)。新患はほとんどいないが、盆や正月の帰省期間中に本土からの体調不良者を診る機会がある。他の業務としては、予防接種や学校医としての保健業務、特老の嘱託医として週1回の回診を行っている。

 島外へは月1回の研修制度(その間相良病院より代診医の派遣あり)があり勉強する機会を作っている。甑島は自然が豊かであるだけでなく、地域特有の伝統行事も沢山あり家族ぐるみで参加させてもらっている。また地域皆が顔なじみであり地域で子どもを大事に見守ってくれる雰囲気が残っており、子どもが小さな間は子育てには最適の場所でもある。

                                  34期 須藤大輔(H28年度年報より)  

永田へき地出張診療所

 屋久島町永田へき地出張診療所(以下、永田診療所)の業務は慢性疾患の管理、感冒等の急性炎症性疾患、外傷が主であり、患者数は月平均300人程度(内科のみ)、1日22人程度、往診は2名/月、時間外診療は月3-4回、定期の患者数は160名程度である。検査はレントゲン、心電図検査、ABI、上部消化管内視鏡、エコー、呼吸機能検査が可能である。外来以外にも乳幼児健診、学校医(永田地区と口永良部島)、介護認定審査会、多職種会議等の業務や、口永良部島は常勤医師がいないため月1回の口永良部島の巡回診療と電話対応も行っている。また鹿児島大学より皮膚科月2回、眼科月1回の医師の派遣を受けている。

 永田診療所に勤務してまず感じたことは非常に働きやすいということであった。主な理由は診療所スタッフの人柄と役場の対応の早さだと思う。永田診療所は、スタッフ同士の連携が密に取れているため新規の医療導入などもスムーズに行え、また日々の診療が円滑に進むように外来・検査予約が組まれている。屋久島町役場に関しては、屋久島の地域医療をよりよくするために非常に熱心であり、またこちらの要望への対応が迅速なため非常に仕事がやりやすかった。永田診療所は今後へき地勤務の可能性がある義務内医師におすすめの勤務地である。逆に働いて感じた診療所の問題点としては、使用期限を過ぎて処分してしまう医薬品が多いことである。おそらく院内処方している小規模の診療所はどこも同様の問題があると思う。対策として1回に大量に注文しないようにしたり、新規採用する際は同効薬や代用できるものがないかを考えてから新規採用を行ったり、患者一人にしか処方してない薬に関しては処方のやり方を工夫したりした。しかし当院のような小規模な診療所では、一人の患者にしか使用していなかった薬はその患者が通院しなくなったら余ってしまったり、常備しておかなければならない緊急時の薬は使う機会がなく使用期限が過ぎてしまったり、2年に1回程度医師が交代するため後任の医師が使わずに余ってしまう薬が出てきたりと、医薬品の破棄が多くなるのはある程度しかたないのかもしれない。また診療所勤務する上で、膝や肩の関節注射の手技は取得していた方がよいと思った。急性の膝痛、肩痛に対する関節注射はかなり喜ばれるし、またそれほど難しい手技ではないと思う。今年度の鹿地医研で鹿児島14期の福元先生がおっしゃっていた通りエコー下で行えば安全で効果的な治療法である。

 最後に、医師が自分一人という場所に1年を通して働くというのは初めてで、近くに相談できる医師がいない心細さや喜怒哀楽を共有できる医師がいない寂しさ、治療が独りよがりになる危険性はあったが、自分が理想と思う医療を自分のペースで行えることは非常にやりがいがあり楽しかった。それは前述したように診療所や役場職員などの周りのスタッフに恵まれたからであり、また様々な場面で地域住民の方々に助けてもらったからであると思う。スタッフの皆様と地域住民の方々にこの場を借りてお礼申し上げます。

                                  32期 中野賢二(H28年度年報より) 

 

瀬戸内町へき地診療所

 瀬戸内町へき地診療所は令和3年より自治医大義務内医師1名と時短勤務医師1名の計2名の常勤に加え、地域医療連携法人アンマによる医師応援という形で、木曜の週1日及び水曜、金曜日の午後外来勤務として 1名の医師が非常勤勤務しております。上記体制で業務を行っています。

今年度から大きく勤務体制が変わりました。大きな変更点としては

・病棟が休床となりました。

・常勤医師が1.5名(常勤1名、時短勤務1名)となりました。

・巡回診療の日程変更を行いました。

があります。その他細々とした変更などはありますが、現時点での勤務状況としては

外来業務、在宅訪問診療, 巡回診療(週3日), 特別養護老人ホーム嘱託医 乳幼児健診、保育所健診(月2回) 予防接種(BCG含め全て) 瀬戸内町医療連携、在宅ケア連絡会(それぞれ月1回) 検死(宇検村までカバーしています) 中学校校医

となっております。その他地域行事への参加なども以前はあったようですが、現在コロナ関連でありおもな行事は軒並み中止となっております。そういった中ではありますが、瀬戸内町が8941人と大きな町のため医療以外の仕事も多いです。

 

主な業務内容として

1)時間内外来(平均50-60人/日 これらは診療所での受診数であり巡回は除く)

エコー検査(心臓,甲状腺,腹部,前立腺/膀胱) 30件/月 1-2件/日

胃カメラ検査 15件/月 1件/日

2)時間外外来

救急車〜walk inまで様々(平均2-3日に1件程度)

当番は勤務者で交互に振り分けてます。基本的に平日は各自かかりつけ医への相談のため、瀬戸内町を幅広くカバーしている当診療所は抱える患者数も多く、頻度も多いです。電話相談のみで終われることも多いですが(それを上記件数に加えると1-3件/日と増えます)、受診になる患者は上記件数です。重症患者は瀬戸内徳洲会病院、大島病院へ紹介しています。この時間帯はXpやCTは自分(医師)で撮影しています。造影や緊急での読影が必要な場合は技師さんに来ていただきます。

3)巡回診療

水曜〜金曜(請島/与路島/瀬戸内町西方方面/加計呂麻島)と行っています。請島、与路島はそれぞれ外海を通り、漁船で50分程度かかるため時化っている場合は中々辛い時もあります。受診数は平均で30人/日と少ないですが集落への移動があるため1日がかりとなっています。

4)病棟業務

有床診療所でしたが、現在諸事情により休床となってしまいました。今後町との話し合いを重ねながら業務について検討していきます。

5)瀬戸内町当番医

月2回土日(計4日)を担当し、終日開業します。時間外含め、当番医ではなくても、瀬戸内町内に小児科医師が常勤していないため当診療所が対応することも多々あります(喘息発作、痙攣、急性腹症)。

6)在宅訪問診療

数は絞っていますが、在宅看取り希望の強い方は対応しています。辛いのは加計呂麻島などでの場合夜間等でも漁船に乗り、死亡診断に行きます。

7)検死

これも時間帯問わず連絡がきます。年間100件程度でへき地診療所は月1-2件程度担当しています。

となっています。 

令和3年度につきましては上記の病棟業務や時間外業務、巡回業務について大きな変更があるため現在体制作りを行いながら日常業務を行なっております。周辺医療機関と協力して町民のために頑張りたいと思います。

 40期 松田耕輔

2023年度予定

 

 

2024年

 

3月2日 第124回総会